「池江璃花子」叩きで思い出す五輪アイドルたち、世間はなぜ悲劇のヒロインを求めるのか【宝泉薫】
■五輪体操アイドルだった岡崎聡子の転落人生
まずは、体操の岡崎聡子。引退後は芸能界入りしてドラマに出たり、エアロビクスの普及に貢献したものの、クスリにハマってしまった。五輪出場は一度きりだが、逮捕歴は通算14回だ。
新体操では山崎浩子が、統一教会への入信で世の中を騒がせた。合同結婚式にも参加したが、家族の説得によって脱会している。
マラソンでも、二度のメダル獲得で知られる有森裕子が結婚をめぐって迷走した。夫となった米国人の金銭トラブルやゲイバー通いが明るみに出てたあげく、会見ではその夫が、
「アイ・ワズ・ゲイ」
と、突然のカミングアウト。過去形であることから、今は違うと強調したかったのだろうが、当時、プロマラソン選手としてCMに出まくっていた有森の商品価値には大きく響いた。じつはもともと、両親からも結婚を猛反対されていて、会見後には相手から離婚を切り出されたという。
しかし、彼女はマラソンランナーならではの持久力と根性で、夫婦生活を13年間続けた。円満だったという離婚の際、彼女が「自分で自分を褒めたい」と思ったかどうかはさだかでない。
名言といえば、競泳の岩崎恭子もまた、五輪でこじらせたひとりだ。金メダルを獲った直後に発した「今まで生きてきたなかでいちばん幸せです」という言葉は、14歳で人生のピークを迎えてしまった人のつらさも浮き彫りにすることとなった。
一躍、ときの人となったことで「どこに行っても誰かが見ているような感じで、心配ばかり」という状態に陥り、競技力も14歳をピークに低下。ハタチで引退してしまう。
しかも「コーチと不倫して妊娠、中絶した」という噂まで飛び出した。根も葉もないものだが、不倫については20年後に現実になってしまった。夫と離婚協議中だった彼女は、報道された事実を認め、謝罪したうえで離婚を発表した。
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